里帰り出産について

私はもし出産する機会があったら「絶対に里帰り出産にしよう」と思っていた。
韓国に住んでいた妹が里帰り出産していたので、里帰り出産が当然と思っていたのかもしれない。
そして実際に里帰り出産をしてみてどうだったかと言うと、
いろいろ面倒なことは多かったものの、良かった点のほうが多かったと思う。
ざっと思い返してみると以下のような良い点・悪い点があった。

 

良かった点
 ・出産にかかる費用がかなり安く済んだ(横浜市から札幌市に里帰り)
   出産した病院に横浜で出産経験のある助産師さんがいたのだが、その方の話では80万円くらいかかったとのこと。
   高額で驚いた。そりゃ出産一時金50万では足りないだろう。

   札幌ではお釣りが来るので向こうの人に言ったら驚かれますよ!!と言われた。実際、費用は45万円で済んでお釣りが来た。
 ・産前産後、食事やら風呂やら何もしなくても上げ膳据え膳で面倒を見てもらえる。
 ・新生児の世話をときどきお母さんに代わってもらえるのが心強い。
   お母さんに見てもらっている間にマッサージと美容院、まつ毛パーマに行った。   
 
 ・大学卒業以来の実家長期滞在が楽しい、嬉しい。

悪かった点
 ・長期間、夫に会えないのが寂しい
 ・産後、授乳などのイライラをぶつける相手(=夫)がいない。
   しっかり母乳育児をした人が周りにおらず「母乳出ていないんじゃない?」とか
   「とりあえずたくさんミルク作って飲むだけあげてみればいいじゃん」とか家族からのちょっとした一言がストレスだったな。
 ・出産費用や乳児検診の費用などの請求の手続きを郵送でしなければならないのが大変。
   
夫が先に横浜に戻っていたのでいろいろやってくれればよいのだが、我が家では事務手続き系は私担当。
   子が寝ている隙を見てプリンターを引っ張り出して印刷すると物音で子が起きる……というようなことを何度も何度もやった。

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不妊治療⑫ -クリニック卒業 速やかに退場

陽性判定が出ても、これまで「今回もだめ」ばかり経験してきた私は手放しで喜ぶことができなかった。
年齢が高いほど流産の確率は高い、障害を持って生まれてくる確率が高い、など
不妊治療中のちょっとしたタイミングで吸収してきた知識によりマイナス思考にしかならない。
もし万が一のことがあったときの心構えをしておくかのように、
ドラマやなんかで見る「やったー!」と夫婦で喜び合うようなことは、我が家ではしなかった。

 

ただ粛々と、ちゃんと子宮内に着床しているだろうか? してた、よかった……
ちゃんと心拍が確認できるだろうか? できた、よかった……
と、一回一回心配してほっとして……の繰り返しで、病院に通った。

 

ちなみに、結局これが子どもが産まれるまでずっと続く。
「安定期」という言葉はあるが、私は安定期に入ったとたんに出血して、
「安定期」と言えども全然安心はできないなと思った。
世の妊婦さんたちは傍から見るとただただ幸せなものだと思っていたが、
子どもを無事に産むために常に不安と隣り合わせなのだ。

 

不妊クリニックは、心拍が無事に確認できたら卒業だ。
ちょうど年末年始を控えていて飛行機に乗ってよいものなのか相談しようと思っていたが、
「このままいくとその前に卒業になるので、転院先の病院で相談してください」と言われ、
妊娠してしまうとなんだか呆気ないものだなあと思った。
(結局大事をとって帰省するのはやめた)

 

ところで卒業と言えば、長らくクリニックに通っている中で、
「ああ、あの人、妊娠できたんだなあ……」とわかってしまったことが2回ある。

 

1回目は私が待合室で順番を待っているときに居合わせた夫婦だった。
たくさんの患者さんたちで待合室のソファーは混雑していたが、
たまたまそばに座っていたその夫婦が、エコー写真を手にして嬉しそうに笑っているのを見てしまった。
エコー写真は通常の診察ではプリントされない。

 

あー、あのひとは赤ちゃんができたんだなあ……。

 

2回目も待合室で順番を待っているときだった。
診察を終えて診察室から出てきた女性が診察室のほうに振り返って、
深々と九十度お辞儀をして「本当にありがとうございました」とちょっと涙声で言って帰っていった。

 

あー、あのひとは赤ちゃんができて今日が卒業なんだなあ……。

 

クリニックに通う患者さんたちは一丸となって同じ目的に向かってそれぞれが努力している。
絶対に子どもがほしい!ほどではないマインドの私だって、お金と時間を使って頑張って通っている。
そんなときに、妊娠した人を見ると、さすがに心をかき乱された。
あのひとはいいなあーと羨ましくなる。
それに比べて私は……この先妊娠できるの? 私の何が悪いの? お酒ばっかり飲んでいたのが行けないの? 
学生時代に部活も入らず運動も何もしてこなかったのがいけないの?
と、まあこんな感じになってしまう。
そんな経験をした私であるから、他の患者さんの心をかき乱すことなく速やかに退場しようと思っていた。
プリントされたエコーを見るのもカバンの中でこっそりとだ。

 

卒業の日、もう先生に会うのは最後。
先生に思い切りお礼を言いたいあの女性の気持ちはわかりすぎるほどわかる。
私も先生に
「本当に本当にありがとう。先生、若くて診察もあっさりだから最初はあんまり信用してなかったけど、
先生のおかげでここまでこれたよ、本当にありがとう。これみなさんでよかったら」と、
菓子折りの一つも渡したいところだけど、いつもと同じトーンで素知らぬ顔で帰る。

 

「元気な赤ちゃんを産んでくださいね」と言われた。

 

ありがとう、先生。

 

不妊治療の費用について、
多少抜けている領収証もあるかもしれないが手元にあるものを計算したところ、
 保険適用前:検査いろいろ+タイミング治療数回+人工授精4回+体外受精1回
 保険適用後:体外受精3回+ERA検査
 合計
158万6455円
であった。
高いのか安いのかはよくわからない。
幸運にも妊娠することができたことを考えると安い気もするし、
もし妊娠することができていなかったら高いと感じるだろう。
確実に言えるのは、もし保険適用がなかったら妊娠するまで続けることはできなかった。
保険適用がなかったらおそらく300万円以上になっていただろう。
このお金は国のお金から出るわけなので賛否両論はあろうし、
これまで保険適用がないため大金を払ってきた人たち、
大金を払っても妊娠できなかったひとたちがたくさんいることを考えると、
暢気に喜ぶのは憚られるが、
幸運にもタイミングよく保険適用になったおかげで赤ちゃんを授かることができて本当に感謝である。

 

ところで、運命をなんとなく信じる派の私だが、世の中には、
体外受精で子どもを授かるなんて、自然じゃないのでは? 運命に逆らっているのでは?
と考える人や宗教もいる(ある)だろうと思う。
私としては「神様はすべて折込積みで、体外受精で子どもを授かることまで計算通り」と思っている。
ので、決して神様や運命に逆らっているわけではなく、むしろ神様は祝福してくれると思うことにする。

不妊治療⑪ -4周目 胚盤胞移植

これまでの流れ

2020年8月 不妊専門クリニックで基本検査 →異常なし
2021年4月~ タイミング治療 →陰性
2021年10月~ 人工授精4回 →陰性

体外受精にステップアップ

2022年1月 採卵 1個→凍結1個(6日目胚盤胞 4aa)
2022年3月 第1回胚移植 ホルモン周期→陰性
2022年4月 採卵 2個→凍結1個(5日目胚盤胞 3aa)
2022年6月 第2回胚移植 ホルモン周期→一応着床するも陰性
2022年7月 採卵 7個→凍結3個(5日目胚盤胞 4ab、6日目胚盤胞 4ab、6日目胚盤胞 4ab)
2022年9月 第3回胚移植  自然周期→陰性
2022年10月 ERA検査と子宮フローラ検査→問題なし

 

2022年11月、4回目の胚盤胞移植をホルモン周期で実施することになった。
自然周期でも陰性だったので、ホルモン周期に戻した。
今回は胚盤胞凍結してあるので、採卵しなくてよいのがとても楽だった。
移殖日は11月24日、奇しくも私が敬愛するラルクアンシエルyukihiro先生のご生誕の日であった……。
いつものように前日まで飲酒し、6日目胚盤胞(4ab)を移植してもらった。

 

そしてこのときの移植で、私は妊娠するのである。

 

当時の時の様子を自分のための備忘録として書き記しておくとともに、
検査薬の写真も一応撮影したのでこの先に載せる。(ご了承ください)

BT4 夕方、お腹が痛いような気がする
BT5  うっすら線が見える。前よりも濃い。左の胸が痛い気がする。
BT6 うっすら線が濃くならない。夕方、ウーマンチェックで検査するもやはりうっすら。
BT7 クリアブルーでうっすら。ずっとうっすら。検査薬が違うから比べられない。午後、お腹が吊るように痛む。
BT8 Pチェックで薄く陽性。判定日のため病院で血液検査。数値105で陽性。
  (検査薬の説明には30以上と書いてあった気がするのだが、105でもうっすらなんだなと思った)

妊娠検査薬



というわけで私は4回目にして、陽性判定を言い渡された。
正直、これまでは何がだめで、今回はなにがよかったのか、よくわからない。
6日胚盤胞は5日目に比べて妊娠率が少し下がるし、ランクもこれまでより悪かったのに今回は着床した。
神様が決めたタイミングなのだろう、としか言えない。そして私の年齢の妊娠率25%というのは本当だった。

 

ただし、陽性判定が出ても手放しでは喜べなかった。
これまで何度もだめだったので、本当にちゃんと着床しているのか? 卵管に着床していたらどうしよう。
ちゃんと心拍確認まで行けるのか? ちゃんと大きく育ってくれるのか?
出血することもあり、
心配で心配で、親にも友人にもすぐには言えなかった。
(先生に相談しても、初期の出血はよくあることなので心配しなくてもいいですよーくらいだったが)
不妊治療でようやくたどり着いたゴールは、不安いっぱいの妊娠生活のスタートであった。
なんだか「結婚はゴールじゃない」とかいうのに似ている。

 

4回目の移植にかかったお金は91855円。採卵がないぶん、かなり安かった。

 

余談だが、4回目の移植では赤ちゃんや子どもの夢を全く見なかった。
私のお腹に着床してくれた命は、私とはまったく別の個人として存在しているのだなと思った。

不妊治療⑩ -ひよってERA検査

自分の年齢の妊娠率を考慮し、胚移植に4回まで挑戦してみよう。
だめだったら不妊治療をやめよう。
そう決意した私のこれまでの経緯をまとめると、以下のような感じになる。

2020年8月 不妊専門クリニックで基本検査 →異常なし
2021年4月~ タイミング治療 →陰性
2021年10月~ 人工授精4回 →陰性

体外受精にステップアップ

2022年1月 採卵 1個→凍結1個(6日目胚盤胞 4aa)
2022年3月 第1回胚移植 ホルモン周期→陰性
2022年4月 採卵 2個→凍結1個(5日目胚盤胞 3aa)
2022年6月 第2回胚移植 ホルモン周期→一応着床するも陰性
2022年7月 採卵 7個→凍結3個(5日目胚盤胞 4ab、6日目胚盤胞 4ab、6日目胚盤胞 4ab)
2022年9月 第3回胚移植  自然周期→陰性

 

胚移植を3回移植したがだめだったので、残るはあと1回だ。
(実際にはあと2個凍結してあるので、あと2回実施できるが、
4回目もだめとなると「もう何をしても妊娠できない体なのでは?」説が浮かんでくる)

 

4回目を実施する前に、できることはやっておきたいと思った。
そこで私はERA検査を受けることにした。

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不妊治療⑨ -3周目 採卵と胚盤胞移植

さあ、まだ終わらないぞ。

 

胚盤胞移植2回目を実施してもだめだった私は、保険適用で費用が安くなったのをいいことに
「4回やってもだめならやめよう……」と考えていた。
というのも、私の年齢では正常な胚を移植したとしても妊娠する確率は25%という情報を見たのだ。
つまり妊娠できる子宮と胚盤胞をもってしても、4回移植しないと妊娠しない可能性があるのだ。
となると、4回やってみなければ結果はわからない。
私は、なんだかんだ理由を付けて諦めるのを先延ばししていた。

 

「どうしても子どもがほしいというわけではなかった」と言いながらまだ頑張るなんて、
もうそれは「どうしても子どもが欲しい人なのでは?」と今では思う。
なにが当時の私を動かしていたのか、自分でもよくわからない。
ただ「自分と旦那の遺伝子を半分ずつ持った人ってどんな人なんだろう?」という興味はあった。

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不妊治療⑧ -2週目 採卵と胚盤胞移植

手持ちの胚盤胞がなくなってしまった私は、またまた1からやり直しだ。
保険適用になり表面の負担はかなり減るものの、また会社を何度も中抜けして診察に通わなくてはならない。
また自己注射をしなければならないのも憂鬱だ。
ちゃんと採卵できるか、受精できるか、凍結できるか、融解できるか、着床できるか……。
飛び越えなければならないハードルがいくつも立ちはだかっている……。

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不妊治療⑦ -判定日

胚移植の3日後(BT3)の日曜日、夫と散歩がてら桜を見に行った。
私と夫とお腹の中の赤ちゃんの卵、家族3人でお花見をするような気分だった。
この子がお腹に居着いてくれるように願った。
この子が産まれてきたら「お腹の中にいるときに花見したんだよ」と話したりするのかなと思った。

 

胚移植の5日目(BT5)から私は妊娠検査薬を使い始めた。
結果は、これまでと同じ、安定の真っ白の陰性だった。
5日目ではまだ早すぎて反応しないだけかもしれない。
6日目も7日目もめげずに検査をした。
が、やはり真っ白。
70万円もかけて、結果はこれまでと一緒だ。

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