胚移植の3日後(BT3)の日曜日、夫と散歩がてら桜を見に行った。
私と夫とお腹の中の赤ちゃんの卵、家族3人でお花見をするような気分だった。
この子がお腹に居着いてくれるように願った。
この子が産まれてきたら「お腹の中にいるときに花見したんだよ」と話したりするのかなと思った。
胚移植の5日目(BT5)から私は妊娠検査薬を使い始めた。
結果は、これまでと同じ、安定の真っ白の陰性だった。
5日目ではまだ早すぎて反応しないだけかもしれない。
6日目も7日目もめげずに検査をした。
が、やはり真っ白。
70万円もかけて、結果はこれまでと一緒だ。
どうして?
グレードのよい胚盤胞を移殖したのにどうして妊娠できないの?
私は「体外受精までやればさすがに妊娠するでしょ」となんとなく思っていた。
それが「体外受精をしてもだめ」という現実を突きつけられて、
これはもう神様が、
「あなたたちは子どもがいない人生を送ることになってますよー」
と言っているのではないかと思った。
私は特に宗教の信者ではないが、なんとなく運命を信じる派で、神様のせいにしたい派だ。
もし妊娠できない体質だと確定できたらきっぱり諦めもつくのに、原因がわからないからつらい。
私の通うクリニックでは、判定日は胚移植から8日目(BT8)に実施する。
検査薬が真っ白なのに、わざわざクリニックに行って「だめでした」と言われるのはなかなか酷だ。
同じ日に胚移植をした4,5人の人たちの中には無事に妊娠した人もいるのだろうか?
と、考えなくてもよい他人のことまで考えてしまう。
採尿をしてしばらくしてから診察室に呼ばれる。
「残念ながら今回、数値出てないんですよね」と言われた。
うん、知ってる。
知ってるんだけどさ……。
病院の検査薬は、家庭用の検査薬では検知できない微量のホルモンを検知できて、
もしかして万が一、結果が違うのではないか……と淡い淡い期待をしていたのだが、
そんなこともなく陰性だった。そうだよねー。やっぱりだめだったかー。
ところで判定日は2022年3月25日であった。
先生から「2022年4月まで待ってから次の治療を開始すれば、保険適用でできますよ」と言われた。
そう、2022年4月から不妊治療は保険適用になることになっていた。
少し前から院内の掲示板で、
「2022年4月から保険適用予定ですが、国から詳細が示されていないのでわかり次第、お知らせします」
と言ったようなアナウンスがされており、夢か幻だと思っていたが本当だった。
70万円をかけた体外受精。保険適用で3割負担になれば、だいたい21万円になるということか。
21万円……安い。
(決して安くはないのだが、もう感覚が麻痺している)
とりあえずここまで来たらやってみようと挑戦した体外受精。
結果はだめだったが、このタイミングで保険適用になろうとしている。
もしかして神様が「もう少し頑張ってみなさい」と言っているのかもしれない……。
頭をポジティブに切り替えて、私たちはもう一度体外受精をしてみることにした。
この際、70万円が保険適用で一体いくらになるのか試してみようじゃないの。